買取したカーペンターズ「ナウ・アンド・ゼン」を久しぶりに聴いてみた。

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福岡市、糸島市、宗像市からレコード買取

シルバー・ウィークは福岡市中央区、福岡市早良区、糸島市、宗像市など色々な地域からレコードやCDの持ち込み買取がありました。
昨日は連休ラスト・デイ、去りゆく休日の夕陽が店内がオレンジ色に染め上げ、儚げな気分に。
買取して傷のあるカーペンターズのCDを視聴チェックがてらにかけてみました。
デジタルリマスターの最新の音がこの風景に合うのではと。

名盤・名録音「ナウ・アンド・ゼン」

アルバムは1973年の「ナウ・アンド・ゼン」。
20年ほど前にもかなり聴いていて、その頃はこのアルバムに素直に感動していました。
ところが今回、久しぶりに聴いてみると、最初に気になったのは音楽そのものよりも録音でした。

B&Wのスピーカーとの相性が非常にいい。
カレンの声が中央に自然に定位して、バックの楽器がその後ろに広がる。
特にリバーブの響きが素晴らしく、単に音を綺麗に加工したというより、スタジオの部屋鳴りや空気まで感じさせるような音です。

ところが、聴き込んでいるうちに、いつの間にか録音ではなく音楽そのものを掘り始めていました。

オールディーズ・メドレーが凄い

このアルバムの大きな特徴の一つが、後半のオールディーズ・メドレー。
最初は懐メロ的な企画に思えるのですが、よく聴くと全然違う。
特に「Da Doo Ron Ron」になると、急に音がワイルドになる。
サックスなのかギターなのか、一瞬分からなくなるような荒々しい音が入ってきて、カーペンターズのいつもの洗練されたサウンドとは違う表情を見せます。
「Da Doo Ron Ron」はフィル・スペクターの代表的な作品でもありますから、
リチャード・カーペンターがスペクター的な音の厚みや荒々しさを意識しているように聴こえるのも面白いところ。
単なる懐メロのメドレーではなく、リチャード・カーペンターのアレンジによって、一つの作品として作り込まれているんです。
「Our Day Will Come」のエレピもいい
今回改めて聴いて、個人的にかなり気に入ったのが「Our Day Will Come」。
カレンの歌だけではなく、後ろで鳴っているエレクトリック・ピアノが実にいい。前に出てくるわけではないのに、柔らかい音で曲全体を包んでいる。
「One Fine Day」では、カレンのちょっとした「Yeah!」が妙にいい。
こういう一瞬の表情が、完璧に作り込まれたサウンドの中にちゃんと残っているんですよね。

そして「This Masquerade」

今回一番驚いたのが、やはり「This Masquerade」。
この曲は何度も聴いてきましたが、今回聴くとカレンの歌唱が少し怖いくらいに感じました。
悲しい曲だから悲しそうに歌う、という単純な歌い方ではない。むしろ感情を抑えている。声を張り上げるわけでもない。過剰に泣き崩れるわけでもない。それなのに、聴いていると妙な緊張感がある。
まるで感情を押し殺したまま歌っているようで、そこに一種の狂気すら感じる。
カレンは単に完璧に歌える歌手ではなく、歌詞や曲の意味を理解して、その曲ごとに表現を変えていた歌手なのではないかと思いました。
「Superstar」の孤独感と、「This Masquerade」の不穏さでは、同じカレンの声なのにまったく違って聴こえる。そこが凄い。

カレンは歌手であると同時にドラマー

そして忘れてはいけないのがカレンのドラム。
カーペンターズというと、どうしても美しい歌声ばかりが語られます。でもカレンは優れたドラマーでもある。
今回あらためて聴いていて面白いと思ったのが、そのドラマーとしての身体感覚が、歌にも出ているのではないかということ。
ドラマーは両手両足を使って、バスドラム、スネア、ハイハットなど、それぞれ違うリズムを身体で感じながら演奏する。
カレンの歌を聴いていると、単純に拍に合わせてメロディーを歌っている感じがしない。
特に「Superstar」などでは、歌が前に出たり、少し引いたり、また波のように戻ってきたりする。一定のテンポの中で、声をドラムの各パーツのように置いているようにも聴こえる。
これは単にリズム感がいいということではなく、ドラマーとして身体に染み込んだタイム感が、そのまま歌唱にも出ているのではないかと思う。
だからカレンの歌には、独特の間がある。
音程は驚くほど正確なのに、歌が機械的にはならない。むしろ、ほんの少し前に出たり、引いたりすることで、波が来たり引いたりするようなうねりが生まれている。
カレンは歌いながらドラムを叩いていたのではなく、ドラマーとして身につけたリズムの感じ方で歌っていたのではないか。
そう考えて聴くと、「Superstar」の歌もまた違って聴こえてくる。
まるで声でドラムを叩いているような瞬間がある。
カレンの凄さは、ただ歌が上手いことではない。歌の中に、ドラマーとしての身体そのものが入っているところなのかもしれない。

A&Mという最高の現場を凌ぐレコーディングの技術

当時のA&Mには、ハル・ブレインをはじめとする超一流のセッション・ミュージシャンがいました。
普通なら、ドラムはハル・ブレイン、ピアノはラリー・ネクテル、アレンジは優秀なアレンジャーに任せるという世界です。
ところがカーペンターズは違う。カレン自身がドラムを叩き、リチャードがピアノを弾き、アレンジを作り、二人の音楽性を中心にして作品を完成させている。
A&Mという最高のポップス制作環境にいながら、最終的にはちゃんとカーペンターズの音になっている。ここが凄い。

あまりにも自然だから、凄さが分かりにくい

カーペンターズは、個人的にはここが過小評価されやすい理由の一つだと思います。
誰が聴いても心地いい。歌も綺麗。メロディーも親しみやすい。アレンジも自然。
だから、もの凄い技術で作られているのに、それがもの凄く聴こえない。
野球で言えば、地元球団、福岡ソフトバンク・ホークスの周東が普通のセンターフライを取っているようなもの。
普通の外野手ならファインプレーになる打球でも、周東が取ると普通に見えてしまう。

カーペンターズも同じで、カレンの歌唱やリチャードのアレンジがあまりにも自然なので、最初は「上手い」「いい曲だな」で終わってしまう。
でも、一枚をじっくり聴いてみると、カレンの声、カレンのドラム、リチャードのピアノ、兄妹のコーラス、木管、ストリングス、エレピ、そしてリバーブ。
細かく聴けば聴くほど、この二人、化け物じゃないかと思えてくる。

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