買取したレコードの査定傾向からみる福岡の中古レコード店長の「80年代ブーム」

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時代の変化と中古盤の売れ行き

先日福岡市西区の当店へ大量の1970年代から現代までのロックとジャズ・レコードの持ち込み買取がありました。
ジャズは50年代から70年代のモダン・ジャズがメインで売れるのに対し、ロックは50年代のロカビリーから現代の最新ロックまで売れていきます。
今回は以前は売れ行きが芳しくなかった1980年代ロックのレコードについてです。

80年代のアナログ・レコードの音質は凄く良いのですが、今回はオーディオ的ではなく、音楽的な話がメインです。

福岡の店頭でも起きている「80年代」の熱気

最近、福岡市にある当店の店頭でも、とにかく80年代カルチャーや音楽の熱気が凄まじいです。
若い世代のお客さんや海外からのコレクターが探しているのは、シティポップをはじめとする80年代のアナログ盤。それに伴い、レコード買取のご依頼でも「80年代ポップスや歌謡曲、洋楽」が完全にメインとなりつつあります。
中古レコード店を経営する立場としては、この盛り上がりは本当にありがたい限りですし、当時の盤がこうして次の世代へ手渡されていく光景を見るのは素直に嬉しいものです。
ただ、店頭でそうした盤を日々査定しながら、ふと思うことがあります。
「リアルタイムで80年代を通過した、当時の一学生だった自分」の記憶と、いま世間で起きている再評価のされ方のあいだにある、なんとも言えないギャップについてです。

「普通の学生」が感じていた80年代の過剰さ

当時の僕は、ごく普通の学生でした。
ですが、1980年代のメインストリームを覆っていた「あの感じ」〜極端な肩パッドのシルエット、ギラギラした照明、チープで機械的なドラムマシンやシンセサイザーの音、バブルに向かっていく過剰で人工的な演出には、どこか身体的な拒否反応がありました。
テレビから流れる洋楽ヒットチャートの押し売り感や、プロデュースされ尽くしたアイドル歌謡。あるいは、どこか「俺たちは分かっている」という自意識が見え隠れしていたインディーズのサブカルチャー。
天神地下街のレコード店で人だかりができていた「スリラー」のMV(ビデオ)もちょっと観て、すぐに立ち去りました。

今改めて聴き直してみると新しい再発見も多く、当時の制作陣やミュージシャンたちの凄さに唸らされることも多々あります。ですが、当時は自分自身も若かったがゆえに、そうした表面的な装飾や時代の空気感ばかりに目が向いてしまい、音の真価が見えていなかったのだと思います。
そうした「大真面目なカッコつけ」や「気取ったアングラ感」のどちらにも素直に乗れず、当時の僕が一番救われていたのは、テレビの真ん中でその大げさなバブル文化をメタ的に笑い飛ばしていた「とんねるず」や「おニャン子クラブ」のバカバカしくもリアルなエネルギーでした。
あの過剰な時代を真面目に受け取るのではなく、「笑い」として解体していたお茶の間の空気感こそが、自分にとって一番しっくりくるリアリティだったのです。

クラブ文化に繋がる音

もちろん、先程も述べたように「80年代の音が全部駄目だった」なんて言うつもりは絶対にありません。特に今聴いて面白いのは、たとえば次のような音楽です。
「ニューウェーブやダブが持っていた、鋭い実験性と空間の美学」
「一部のソウルミュージックやファンクに宿っていた、深い肉体性とグルーヴ」
「現代の肉体派ロックの元祖ともいえるハード・ロック/ヘヴィ・メタル」
「ベテランミュージシャンたちが80年代の最新テクノロジーを果敢に取り入れ、自身のサウンドと格闘しながら昇華させた名盤の数々」
そこには間違いなく、時代を超えて残る本物の音楽が存在していました。
SNSなどを見ていると、「80年代シティポップのサウンドが今のクラブ文化の流れに乗っている」という話をよく見かけます。これには「なるほど」と深く納得させられます。
80年代のシティポップが持っていた洗練された打ち込みや電子楽器の緻密なプロダクションは、現代の音楽から見れば「テクノ文化の延長線上にあるダンスミュージック/ループミュージック」として地続きで鳴っているということでしょう。今の若者や海外のDJたちがフロアでそれを心地よく鳴らしている構造は、音楽の歴史として非常におもしろい現象だと感じます。

映画やライヴから見るマイケルとエルヴィス

ただ、僕自身の根底にあるのは「ルーツ・ミュージック(ブルース、ソウル、R&Bなど)の肉体性とグルーヴ」を何よりも愛する美意識です。だからこそ、ポップスターたちの見え方も少し独特なのかもしれません。
たとえば、マイケル・ジャクソン。
1983年の『モータウン25』の映像や、ブダペスト公演のライヴ映像(90年代だが)で観たマイケルには、画面越しでも全身に鳥肌が立つほど大興奮しました。そこには、ソウルやR&Bの血を引く男が魅せる、圧倒的な「肉体とリズムの尖鋭的な本物」があったからです。
しかし90年代、実際にスタジアム(福岡ドーム)で観た「生のマイケル」は、会場が広すぎて遠く、ド派手な演出や大掛かりな仕掛けという「80年代的な過飾のメッキ」に埋もれてしまい、どこか冷めた目で遠くから眺めることしかできませんでした。
もちろん映画やライヴの楽しみ方は人それぞれですし、現在公開されている伝記映画も実際に観ていないので何とも言えないのですが、個人的にはなかなか能動的に劇場へ観に行く機会を作れずにいました。
なぜなら僕にとっては、『モータウン25』で彼自身が叩きつけた、あの剥き出しの「本物の肉体とリズム」の記憶があまりにも強烈だったからです。当時のあの映像で受けた衝撃こそが、自分の中での決定的なマイケルの姿として今も残っています。
一方で、映画『エルヴィス』には無茶苦茶に感動しました。
あの映画が素晴らしかったのは、白人のハンサムな若者が、幼少期にテント教会でゴスペルを聴き、街のブルース・クラブで生々しい叫びに魅了され、「黒人音楽の生々しいルーツを全身で吸い込んでしまった姿」をごまかさずに描いていたからです。
音楽の根底にある「本物のルーツ」と、それを飲み込もうとする巨大な「商業主義の悲哀」。その双方を描き切っていたからこそ、魂が揺さぶられたのだと思います。

時代によって変わる1枚のレコードの重み

いま再評価されている80年代ブームを見ていると、時々「音の構造や歴史的な文脈」よりも、「レトロでエモーショナルな記号」としてフラットに消費されているように見えることがあります。
しかし、一度「ダサいもの」として時代の波に洗われ、淘汰され、その中から本当に良いものだけが生き残ってきたという歴史のプロセスや、テクノやクラブミュージックへ繋がる音の構造こそが、音楽の本当の面白さだと思うのです。
福岡の店で今日も80年代のレコードを棚に挿しながら、そんな当時の記憶と今の空気感のギャップを噛み締めています。
流行りのジャケットや雰囲気に惹かれて手にとるのも大歓迎です。でももし興味があれば、その背景にある「70年代からのグラデーション」や「90年代への足がかりとなった本物のルーツの音」まで、一歩深く掘り下げてみてください。

福岡でレコードやCDの買取・査定なら当店へ

当店は、ブルースやソウル、R&Bをはじめとする「ルーツ・ミュージック」の深い味わいと価値**を大切にしている中古レコード店です。
80年代のシティポップやメガヒット作品はもちろん、その裏に隠れたディープなソウル、ニューウェーブ、ダブ、ジャズなどの貴重なアナログ盤まで、音楽の文脈を理解した上で丁寧に査定・買取・販売を行っています。
ご自宅に眠っているコレクションの整理や、街掘りのついでに、ぜひ気軽に福岡市の店舗へお立ち寄りください。知識と耳を持った店主が、大切なレコードを一枚一枚拝見いたします。


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