郷ひろみ初期アルバム論〜1970年代、筒美京平が到達した『アイドル・アルバム』の極点

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最強布陣のアイドル・アルバム

福岡出身だけにレコードの買取が多い?
というわけではないが、郷ひろみのレコードの買取はもちろん日本全国で多いし、
ここ福岡の当店でも買取査定額はよくて10円だろう。
しかしながら、郷ひろみという稀代のアイドルのアルバムを通じ、
筒美京平がこの初期の4枚を論じることは、
バート・バカラックやクインシー・ジョーンズ等のプロデューサーを語ることに値する。
ジャニーズ、CBSソニー、筒美京平が組んだ最強アイドル郷ひろみアルバム4部作+1を語ってみようじゃないか。

改めて郷ひろみを作品単位で追う

郷ひろみの初期アルバムを、
ここまで腰を据えて聴き直したのは正直はじめてだった。

自分は世代的に
「男の子女の子」は知っていたけれどリアルタイムの体感ではなく、
物心ついた頃の郷ひろみは
「マイ・レディー」以降の完成されたスター像だった。

それでも、
中古レコード店を長くやってきて、
レコードやCDという「作品単位」で音楽を見てきた耳で改めて並べてみると、
どうしても見えてしまう。

1970年代前半、
郷ひろみのアルバムは明らかに異常な密度で作られている。

初期4枚+1

まず結論から

郷ひろみの初期は、
アルバムとして3段階を経て、4枚目で完成する。

ここで扱うのは、次の4枚。
• 男の子女の子
• 愛への出発
• ひろみの部屋
• ひろみの朝・昼・晩

そしてこの流れを、
完成後に一度距離を取る外伝として、
**ひろみの旅**を比較対象に置く。

事務所やゴシップの話は、ここではしない。
見るべきなのは、音楽とアルバムの構造だけだ。

1枚目|『男の子女の子』

――直球だけで成立してしまったデビュー盤

このアルバムは、最初から強い。

音は詰め込まれている。
ブレイクはほとんどない。
歌が止まらない。

それでも、聴いていて苦しくならない。

理由は明確で、
筒美京平が
郷ひろみの声と身体だけを見て曲を書いているからだ。

実験はない。
迷いもない。

「この人間で、どう勝つか」
それだけに集中したアルバム。

だからこれは、
汎用的なアイドル盤ではない。

郷ひろみでしか成立しない1枚目だ。

2枚目|『愛への出発』

――フォークという「変化球」を一度投げる

セカンドは、正直に言うとでこぼこしている。

フォーク的な語り口。
内省的な空気。
1973年という時代の匂い。

ただ、これは失敗ではない。

例えるなら、
直球を持っている投手が、
あえて一度フォーク(変化球)を投げてみた感じ。

野球のフォークと、フォークソング。
どちらの意味でも。

結果としてアルバムは均質ではない。
だが後から聴くと分かる。

この混線があったから、
次の展開が成立した。

3枚目|『ひろみの部屋』

――筒美京平の「管理された実験作」

このアルバムは特異だ。
• ニューソウル的なホーン使い
• 内側で回るリズム
• 即効性より滞在感

ヒット狙いの作法ではない。

明らかに、
筒美京平の実験が前面に出ている。

ただし、無秩序ではない。

アルバムの冒頭とラストには、
アイドル的な距離感を残す演出がある。

これは支配でも迎合でもなく、

実験盤を成立させるために、
聴き手との関係を切らなかった判断

だと思う。

だからこの盤は、
違和感があるのに捨てられない。

郷ひろみのアルバムであると同時に、
筒美京平の実験ノートでもある。

4枚目|『ひろみの朝・昼・晩』

――すべてを整理した「完成形」

ここで一気に整理が起きる。
• 1枚目の直球
• 2枚目の揺れ
• 3枚目の実験

それらをすべて通過したあとで、
郷ひろみが最短距離のポップスに戻ってくる。

無理がない。
引っかかりも少ない。
それでいて浅くない。

このアルバムで、
初期郷ひろみのアルバム論は一度完結する。

(比較)『ひろみの旅』

――完成後に置かれた「間(ま)」とジャケットの意味

『ひろみの旅』は、
《朝・昼・晩》の後に発表されている。

音楽的には実験ではない。
頂点を更新する意志も感じない。

ここで重要なのは、ジャケットだ。

それまでの郷ひろみのアルバムは、
どこかで必ず「こちら」を見ていた。

だがこのアルバムでは違う。

視線は客を見ない。
ポーズも決めていない。
移動している人間が写っている。

音とビジュアルが、
同じことを言っている。

これは完成ではない。
だが、次に向かっている途中だ。

だから『ひろみの旅』は重要だが、
初期の頂点には含めない。

完成後に置かれた、静かな外伝だ。

なぜこの時期が特別なのか

理由は単純だ。
• 筒美京平が
作曲家の枠を超えて、
アルバム全体を設計していた
• シングルではなく
アルバム単位で試行と回収が行われていた
• それが
短期間に連続して起きた

だから今聴いても、
• アイドル盤なのに
アルバムとして読める
• 構造が見える
• 後追いでは再現できない

結論

郷ひろみ初期――
《男の子女の子》から《朝・昼・晩》まで。

これは、

1970年代日本ポップスが、
アイドルという形式で到達できた
ひとつの極点

だと思う。

過剰に神話化する必要はない。
でも軽く扱うのも違う。

だから今、
理解が進んだあとに、
改めて手元に置きたくなる。

これは“後から欲しくなるアルバム群”だ。

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