ある事情でフュージョンを
ジャズはかなり好きです。 ところが、いわゆる「フュージョン」と呼ばれる音楽には、昔からそれほど食指が動きませんでした。 特に日本で「フュージョン」と言ったときに真っ先に名前が挙がるような有名なバンドありますよね。 80年代的な洗練されたサウンド。 もちろん演奏技術が高いことは分かります。 でも、どうも私はあの感じが好きになれない。 上手い。きれい。洗練されてメロディアス。 でも、私には少し「音楽が出来すぎている」ように聞こえるのです。
これは昔から読んでいた音楽雑誌の影響もかなりあると思います。 『ミュージック・マガジン』や中村とうようさんの評論などを読んで育ったこともあり、知らず知らずのうちに、フュージョンをあまり聴かないようになっていたのかもしれません。
ところが最近、ちょっとしたきっかけがありました。
とあるカフェでレコードを10枚選んで欲しいと。私はいつものようにエルヴィス・プレスリー、ローリング・ストーンズ、ザ・バンドなどを選んでましたが、常連さんから「なんか面白くないな~」の声が。
250円のレコードを実際に聴いてみた
福岡にある当店の在庫には、当然ながらフュージョンのレコードも入ってきます。
買取したレコードの中には、状態や需要などを考えて、250円程度で販売しているものもかなりあります。
基本お客さんのレコード試聴は自由です(限度はありますが)。
だから自分の好みの音楽以外も聞くことになります。
あるお客さんがフュージョンを聞いてました。
ちゃんと歌心がある。
ファンクやソウルの匂いもある。
ジャズの延長として聴けるものもある。
そこで、改めて店の安い在庫を聴いてみることにしました。 もちろん、うちの店に現在あるレコードだけ。 「世の中のフュージョン名盤を全部聴き直して選びました」という話ではありません。 あくまで、福岡の中古レコード店に実際に買取で入ってきたレコードの中から、私自身が聴いて「これはいい」と思ったものを10枚選びました。 そのため、かなり偏っています。 でも、こういう選び方のほうが面白いんじゃないでしょうか。
1.Larry Carlton – Larry Carlton
カールトンは、今回の10枚の中ではフュージョンがAOR/ポップスへ最も自然に溶け込んでいく方向を象徴する存在。技巧をひけらかすというより、ギターの音色とフレーズを歌ものの中に置き、洗練された都会的なサウンドを作る。その一方で、ブルースやソウルを基盤にした「黒さ」はしっかり残っている。 「フュージョンの演奏力を、ポップスの快楽に変換した人」という位置づけ。
2.Eric Gale – In The Shade of a Tree
ジャケットだけを見ると、木陰に芝生、青空という爽やかな雰囲気で、いかにも洗練されたフュージョンという感じ。でも、実際に聴いてみると、意外なほど黒い。
それはゲイルのギターだけではありません。キーボードのピーター・ショットがいい。派手に前へ出るというより、ゲイルのギターとリズム隊をうまく支えています。ショットはアレンジや作曲にも関わっており、キッド・クレオール&ザ・ココナッツでも活動していた人です。
そしてリズム隊が面白い。ベースのネディ・スミス、ドラムのフレディ・ウェイツとウィンストン・グレナン、パーカッションのナッサー・ナッサー。ジャズだけでなく、ファンクやカリブ音楽の感覚も感じられる編成です。実際、このメンバーはゲイルがこの時期に組んだバンドの中心でもありました。
録音も良く、ベース、ドラム、パーカッションの動きがよく聴こえるので、リズムの身体性がしっかり伝わってきます。
私は、こういう音楽のほうが好みです。演奏も必要以上に「俺たちは上手いぞ」と前に出てこない。この「引き算」がいい。
フュージョンというより、ブラック・ミュージックやファンク、カリブ音楽の感覚を持ったクロスオーバー作品として聴いたほうがしっくりきます。
3.Staff – Live
今回の10枚の中でも、個人的に自分寄り。 スタッフです。 スティーヴ・ガッド、リチャード・ティー、コーネル・デュプリー、エリック・ゲイルなど、錚々たるミュージシャンが集まったグループ。 好きなメンバーが多いです。ここで聴こえてくるのは「フュージョン」というより、ファンク、ソウル、R&Bのグルーヴです。 技巧を見せるための技巧でもなく、 上手いのに、上手さを売り物にしていない。 そうなると、ちょっと地味過ぎるのが玉に瑕でしょうか。良い言い方だと「クール」ですね。しかしファンキーになるとクールな抑制が解除されて、時折黒さが滲みでてしまう(笑)
4.Native Son – Savanna Hotline
日本のフュージョンから1枚。 ネイティヴ・サンです。 本田竹広、峰厚介、川端民生、村上寛、大出元信など、モダン・ジャズでも実力派のミュージシャンによるフュージョンです。 日本のフュージョンといっても、いわゆるフュージョン・ブームのイメージだけではありません。 ジャズをしっかり土台にした、演奏そのものに聴き応えのある音楽があります。ネイティヴ・サンも、単純に「テクニカルな日本のフュージョン」として片付けるのはもったいない。大出元信のカッティングの素晴らしさ、本田竹広の電化マイルスのようなエフェクト、硬質なリズム隊、アングラ界隈から飛び出たフュージョン。
5.Sadao Watanabe – California Shower
渡辺貞夫の『California Shower』。 ナベサダはさらに自由で、ジャズ、ボサノヴァ、ラテン、フュージョン、AORを横断しながら、ジャズの黒さや技巧を前面に出さず、メロディとサウンドそのものを洗練させていく。グローヴァー・ワシントンJr.にも近い方向性だが、ナベサダのほうがフレーズや音色のコントロールが緻密で、ポップスの中に完全に溶け込む。 「ジャズマンがポップスを演奏する」のではなく、「ポップスそのものとして成立させる」上手さがある。
6.Earl Klugh – The Best of Earl Klugh
アール・クルー。 今回の10枚の中では、比較的「フュージョンらしい」一枚かもしれません。 ただ、やはりギターに歌心があります。 派手な技巧をこれでもかと見せつけるというより、丁寧に弾いている。 そのため、私にも入りやすかった。 フュージョンという言葉だけで避けていたら、こういう音楽も聴き逃してしまうんですよね。これのみベストです。残念。
7.Grover Washington Jr. – Best Is Yet To Come
このあたりになると、もう「フュージョン」という言葉で括ること自体に無理がある気がします。 ジャズを基盤としたポップスです。 グローヴァーが上手いかどうか分からないが、私がフュージョンに求めるのは、黒いか白いか分からない、こういう「ゆらゆらした」部分です。 その点グローヴァーは黒さが残ってる気がして、ナベサダの緩いグルーヴの方が僕の好みです。
8.Fuse One – Fuse One
スターたちが集結したプロ野球のオールスター戦を楽しむような感覚で聴いていると、ミュージシャン一人ひとりの個性もよく分かります。 やばい、あまり好みでないサウンドだな〜と思った瞬間ギターが唸ると「オ〜」となる(笑)
9.Bob James – Touchdown
ボブ・ジェームスの特徴である洗練された鍵盤、ストリングス、ホーン・アレンジに、70年代後半のポップなファンク/R&Bのリズムが組み合わさっている。 「ジャズの黒さ」を前面に殆ど出さず、黒人音楽のグルーヴを洗練されたサウンドの中に埋め込んでいるところ。
10. The Crusaders – Rhapsody and Blues
クルセイダーズはやはり人気があるので、店頭の250円コーナーでは売れてしまったのか、残っていたのはこれだけ。
いろいろなフュージョンを聴いてみましたが、やっぱりクルセイダーズは腰の座り方が一流です。特にリズム隊がいい。
フュージョンをあまり聴かなかった理由
今回、いろいろ聴いてみて少し分かったことがあります。 私はフュージョンそのものが苦手だったわけではなかったのかもしれません。 苦手だったのは、 「フュージョンっぽい音」 だったのではないか。 演奏が上手い。 音がきれい。 音数が多い。 都会的。 洗練されている。 でも、そこにソウルやファンクのような「身体で感じるもの」が少ない。今回、改めて、 自分はルーツ・ミュージックが好きなんだと思いました。
今回選んだ10枚はこちら
1. Larry Carlton – Larry Carlton
2. Eric Gale – In The Shade of a Tree
3. Staff – Live
4. Native Son – Savanna Hotline
5. Sadao Watanabe – California Shower
6. Earl Klugh – The Best of Earl Klugh
7. Grover Washington Jr. – The Best Is Yet To Come
8. Fuse One – Fuse One
9. Bob James – Touchdown
10. The Crusaders – Rhapsody and Blues
こうして並べてみると、いわゆる「フュージョン名盤10選」とはかなり違います。 でも、これがジャズ好きで、フュージョンをほとんど聴いてこなかった福岡の中古レコード店主が、実際に買取で入ってきたレコードを聴いて選んだ10枚です。 しかも、わざわざ高額盤を集めたわけではありません。 店の安い在庫から聴いています。 「フュージョンはちょっと苦手」という方も、一度この辺りから聴いてみると、意外と印象が変わるかもしれません。 私自身がそうでした。 ジャンル名で避けていた音楽を、レコードを聴いてみて少し見直した。 今回の10枚は、そんな個人的な再発見の記録です。 福岡で中古レコード・CDの買取をしていると、こういう思わぬ発見があるのも面白いところです。 レコードやCDの買取もお気軽にご相談ください。
音楽カフェ「HiLo」に10枚のジャケット展示します
今回選んだレコードを9月の半ば頃、福岡市早良区田村にある音楽カフェ「HiLo」に飾る予定です。
ぜひ、福岡市西区の「アッサンブラージュ」、福岡市早良区の「HiLo」にお越しください。
福岡のレコード・CD買取致します
福岡県内、福岡市内、国内盤、輸入盤問わず、ジャズ、ロック、ソウル、ブルース、R&B、ワールド・ミュージック、パンク、ハード・ロック/ヘヴィ・メタル、日本の音楽、シティポップなどのレコード、CD、買取、出張買取、店頭買取(持ち込み買取)致します。福岡市の中古レコード・CD屋アッサンブラージュ。





